『この会社ってホワイト企業だなぁ。ここに勤められて良かった!』
実際にホワイト企業に勤められている方は、このようにお思いでしょう。しかし中にはせっかくホワイト企業に転職・就職したのに、なぜか上手くいかなくて失敗してしまう方もいらっしゃいます。
そこで今回は、そんなホワイト企業に転職・就職で失敗した体験談をお持ちのライターさんに、記事を書いていただきました。ホワイト企業に勤めていたのに、いったい何に失敗してしまったのでしょうか?それではどうぞ!
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私は前職で広告代理店に勤務し、そこでディレクターとして情報誌を作る仕事をしていました。
広告代理店というと某大手企業の強いイメージのせいか、ブラックな業界と思われるかもしれません。
ですが私が勤めていた会社は、世間的に見れば羨ましいほどのホワイト企業でした。給料よし、休みよし、仕事内容よし、オフィスの立地よし、研修制度よし、やりたい仕事に挑戦できる環境よしと、こんなに良い条件の揃った会社は他にないと思いましたから。
こんなに整った会社で働けるなんて夢のようだと思っていましたし、私はもちろん、家族や友人も喜んでくれました。
しかし3年後、想像していなかった結果が待ち受けていたのです。
前職のこのホワイト企業も含め、私は30歳を目前にしてすでに4回転職していたので、会社の社風になじむまで時間がかかることは承知の上でした。
はじめは環境に慣れないせいで多少体調を崩しましたが、人にも恵まれ、入社3か月後には中途採用らしく一人前として働いていました。非常に忙しかったですが、やりがいも見出し、楽しく仕事をこなしていたのです。
前述の通り、休みや終業時間の規則がしっかりしていましたので、夏休みや有休も取れましたし極端な残業もありません。
クライアントの事情で休日出勤した場合は、もちろん平日に振替休日を取ることができましたし、振替休日が取れない場合は休日出勤を上司が断ってくれるほど。
研修も多く、学ぶことは多くありました。入社半年後にはふたりの後輩もでき、1年後にはすっかり一人前のディレクターになっていました。
しかし、この辺りから私の人生が狂いはじめます。
面倒を見てくれて何かと頼りにしていた先輩方がいたのですが、同時にふたりとも異動になってしまったのです。マネージャーの先輩は隣の部署に異動し、ディレクターの先輩も異動までもう少しという状況になりました。
異動してしまった先輩たちはどちらも5年以上の勤務経験があり、私にはまだまだ教わらなければならないことがたくさんあったのです。
しかし私にも、部署のリーダー職が任されることになりました。一人前とはいえ、私はまだ社内では1年目の若手です。実力が伴わないことを自負しながらも、自信のないままこの仕事をこなさなければならないため、まさに無我夢中で働きました。
そんなふうに働いている時間は、忙しくもとても楽しく、今振り返ってもとてもいい経験だったと思っています。現職でも励みになる経験です。
ただひとつ後悔しているのが、このがむしゃらだった時期に、もっと一人ひとりと向き合う時間を作るべきだったということです。
任された部署は20代前半の若いメンバーが多かったこともあり、ささいなことで機嫌を損ねたり、反発があったり、思うようにいかない時期がありました。
元々人に嫌われることを恐れる性格だったこともあり、ぶつかることを避けて過ごしてきました。そのため、私の価値観と同じメンバーとは上手くいくものの、そうではないメンバーとはだんだん上手くいかなくなりはじめます。
何度も修復を試みましたが、溝は深まる一方でした。表面上は穏やかであっても、内心そうではない時期が長く続きました。
そんな中、唯一の上司も異動したほか、仲の良かった同僚も退職することになりました。
心の支えを失ったせいか、体調も崩しがちになりました。
それでも仕事は大好きでしたから、やりたいことはもっともっとありました。クライアントも、一緒に仕事をする営業やデザイナーのことも大好きで、そんな彼らと仕事を必死にすることで精神を安定させようとしていました。
しかし早すぎる環境の変化に付いていけず、心身はボロボロになっていたのです。それこそ、3年目を目前にして退職を決意するほど。
大好きなものをすべてなげうってでも、ここから離れなくてはならないと思ったのです。
そしてそこに追い打ちをかけるように、私の後任として同期が選ばれました。
まるで『私ができなかったから』、と言われているように感じてしまいました。誰も私を責めず助けようとしてくれていたのですが、自分で自分を追い込んでいたのです。
その結果、退職時期を早めてもらうことになりました。
誰の目から見てもホワイト企業と言える会社に勤めた3年強。自分の心身の問題で、失敗することになりました。
ただ、この転職が完全な失敗だったとは思っていません。知識や経験、人脈、得たものは山のようにあるのです。
その代わりに、心身の健康を失いました。大切な家族や友人を傷つけてしまったことも少なくありません。心を壊してしまうと、なかなか完治は難しいので、未だに薬を飲むこともしばしばあります。
それでも、あのホワイト企業で働けたことを幸せに思っています。心を壊す原因は社内の人間関係でしたが、回復に力を貸してくれたのも会社の仲間だったからです。
今私は新しい会社で働きながら、また新たな夢に向かって進んでいます。
ホワイト企業に勤めることがゴールではありません。肝心なのは、そこで働いていけるかです。
転職サイトや転職エージェントを利用される場合は、その点についてもよく吟味して活動していただければと思います。
最後になりますが、私のこの経験がお役に立てれば幸いです。